研究課題
研究計画に準じて本年度は(1)FEN1マウスに紫外線を照射し、腫瘍発生実験を継続すると共に(2)FEN1を欠損させた場合の細胞分裂能に与える影響を検討した。後者の目的の為に、FEN1siRNAを用いてHela細胞のFEN1発現を効率良く抑制する実験系を確立した。この系ではFEN1siRNA処理後、72h-144hに亘り、FEN1の発現を殆ど完全に抑えることができた。この間、細胞は徐々にその分裂能力が低下し、144h後には全く分裂しなくなった。これと合わせて、細胞では老化(senescence)がおこっていることを示す指標であるβ-galactosidaseの発現が上昇し、144h後では100%に近い細胞で老化をおこしていることを確かめた。これとは別に、shart hair-pin RNA(sh RNA)を用いても同様の結果が得られたが、この場合はsiRNAを用いた系と異なり、老化の程度は低かった。これらの結果より、FEN1の活性がなくなることで、細胞の老化が促進することが推測された。そこで、次に老化と密接な関係があるとされているtelomere構造におけるFEN1の役割について検討した。すなわち、FEN1活性がなくなることでtelomere構造に欠陥が生じ、その結果、老化を促進させる歯車がまわりだすのではないかと考えた。この点に関してはまだ解析中であるが、現時点では、(a)FEN1がtelomere構造と結合しているらしいこと(b)FEN1の発現をおさえることで、老化の促進に関与している細胞周期関連p21の発現誘導やp38のリン酸化抑制を引きおこしていることを確認している。来年度以降もひきつづいてFEN1が紫外線照射によるtelomere構造の維持に深く関与していることを確認するための分子遺伝学的実験を行い、紫外線による悪性腫瘍発生のメカニズムとFEN1との関係について解析を続けたい。
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Cell Death Differ 16
ページ: 1505-1514