研究概要 |
(1) 歯根膜細胞系統への分化指標の検出 私達の研究室で樹立した、分化段階の異なる2種類のヒト歯根膜幹細胞株(1-11細胞株、1-17細胞株;1-17細胞株は極めて未分化な細胞)が発現する表面抗原についてcDNAマイクロアレイ法を用いて検討した結果、CD24,CD37,ならびにInterleukin-6 signal transducerが1-11細胞株に1-17細胞株に強く発現していることが明らかになった。そこでこの結果について、フローサイトメトリーならびに磁気細胞分離システムを用いて検討したが、両細胞株間で発現の割合に差異は認められず、またこれらの表面抗原に陽性の細胞群の抽出を行い、それらのセメント芽細胞/骨芽細胞分化について検討したが顕著な相違は確認されなかった。以上より、歯根膜細胞系統への分化の指標となるマーカーには他の候補が考えられる。 (2) 歯根膜再生に最適な足場材の開発 以前私達は、β-TCP上で1-11細胞株が歯根膜組織様分化を示すことを報告し、この結果をさらに推進するために、線維芽細胞増殖因子(bFGF)ならびにBone Morphogenetic Protein2(BMP2)にてβ-TCPをコートし、免疫不全マウスの背部皮下に移植実験を行ったが、これらの増殖因子の効果が生体内で発揮できなかった。そこで、足場材の新規開発が必要であると考え、現在、生体の骨の成分に極めて近似した、新規の人工材料の開発に取り組んでいる。これまでに、この材料が歯根膜細胞に対して、これまでの材料と比較して非常に高い細胞親和性を示しており、さらに歯根膜細胞の分化に対しても、促進効果があるという基礎データを得ることができている。
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