研究概要 |
本研究は、歯髄炎において、より早期に確実に歯髄炎治癒・歯髄再生に導く、安定化されたヒトMMP-3を使用して、歯髄炎治療薬を開発することを目的とする。そこで、本年度は1.in vitroにおける増殖促進、遊走促進、抗アポトーシス効果、2.歯髄炎へのMMP-3の応用の実験を行うこととした。まず、ラット歯髄細胞を用い、炎症性サイトカインとして,IL-1β(2.5ng/ml)とサイトカインミクスチャー(3U,IL-1β, TNF-a, IFN-g)で刺激するとMMP-3の発現と細胞増殖が認められたが、アポトーシス細胞死は惹起されなかった。しかしながら、IL-1β(25ng/ml)とサイトカインミクスチャー(5U)刺激ではMMP-3の発現が認められず、細胞増殖の低下とアポトーシス細胞死が惹起された。MMP-3 siRNAによるノックダウンにより,IL-1β(2.5ng/ml)とサイトカインミクスチャー(3U)刺激の条件下で,細胞増殖の抑制とアポトーシス細胞死が惹起された。よって、炎症性サイトカインにより誘導されたMMP-3をノックダウンすることにより細胞増殖がサイトカインの濃度依存的に抑制され、アポトーシス細胞死が惹起されたことから、MMP-3が炎症時における細胞増殖と抗アポトーシスに関与する可能性が示唆された。また、in vitroにおいてTAXIScanを用いて遊走を測定すると、SDF-1と同様に、MMP-3により歯髄細胞は3時間までに徐々に遊走し、プラトーに達したことから、MMP-3の遊走促進効果が明らかとなった。ついで、イヌ一部性歯髄炎モデルの歯髄面に活性型MMP-3を塗布すると、前駆型MMP-3塗布と同様に、歯髄の増殖、歯髄炎治癒が観察された。これにより、MMP-3は生体内で活性型とたり歯髄に作用していることが明らかとなった。
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