研究概要 |
<歯質接着界面の検討> 歯質接着メカニズムを解明するため,酸や機能性モノマーの分子構造とアパタイト表面における化学的相互作用との関連性について分子レベルで解析した。本年度は,作成中であった論文の追加実験として4-MET, Phenyl-Pと10-MDPの反応特性と比較し,それぞれの機能性モノマー反応メカニズムを検討した。 合成アパタイトの粉体を機能性モノマーの15%溶液((エタノール45%,蒸留水40%)と反応させ,反応後の試料を遠心分離した後,エタノールで洗浄した。その後,沈殿した粉体を遠心分離で回収,乾燥後,X線回折(XRD)を用いて分析した。その結果,Phenyl-Pはアパタイト表面に吸着し,表面のカルシウムと結合したものが溶液中に解離することにより,アパタイト表面の脱灰を促進することが示唆された。また,10-MDPは反応初期でアパタイトに吸着し,層状構造をとることが明らかとなった。一方,4-METは反応の速度が遅いことがわかった。 <骨に関する分析> 骨折の治癒機転に関わる未分化な間葉細胞がメカニカルストレスにどのように反応するのかを検討した。すでに,実験的骨折モデルにおいて,Sox9やRunxlが骨折部に出現する仮骨に出現し骨化が進むにつれて,その発現が著しく減弱することを見出している。そこで,未分化間葉細胞におけるSox9やRunx1の発現の亢進が,メカニカルストレスによる直接作用によるものなのか,関節作用によるものであるのかを検討した。本実験では,未分化間葉細胞はシリコン膜上で培養し,岡山大学歯学部中央研究施設所蔵のフレキサーセルユニットによって,細胞表面に応力が付加された。その結果,メカニカルストレスはSox9 mRNAの発現は直接作用として亢進するものの,Runl mRNAの発現は間接的に亢進することが明らかになった。
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