研究概要 |
平成22年度に引き続き,歯質接着に関しては,酸や機能性モノマーの分子構造とアパタイト表面における化学的相互作用との関連性について分子レベルで解析し,接着メカニズムの深耕を深めた。本年度は,特に効果の高かった10-MDPに加え,スペーサーの部分が短い6MHP,ならびにフッ素を導入して疎水性を増したMF8Pなど新規の機能性モノマーを合成して反応特性を比較するとともに、アパタイトに対するそれぞれの機能性モノマーの反応メカニズムを検討した。その結果,6MHPは10-MDPと同様,歯質無機成分であるアパタイトと反応して層状構造を形成するものの,分子長が短い(10-MDPはCH2が10個連なるのに対して,6MHPは6個)ため層間の距離が短くなっていた。また,MF8Pは疎水性を増したことにより,10-MDPを用いた接着システムよりも接着耐久性を増す可能性が,サーマルサイクル試験後の接着強さの測定から明らかとなった。 また,骨とチタンとの界面に関しては,チタン,金,アルミナ,ジルコニアなどをコーティングしたガラス面上に骨芽細胞を播種し,平成22年度に引き続き材料表面での挙動を観察した。その結果,共培養した繊維芽細胞より分泌される生体分子が,チタン表面における骨芽細胞の接着や増殖を促進していることが明らかとなった。 さらに,生体との界面の制御技術を確立するために開発した可視光反応性ゼラチンなどの高機能化材料を用いた基礎研究では,幹細胞を治療が必要な部位に留める技術を確立することができ,肉眼所見ではあるが軟骨が形態的に完全に回復した。細胞を用いない時は肉眼的にも形態回復を得られなかったため,細胞を治療部位の生体/補填材料界面に留める技術は,再生医療において有望であると思われる。
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