研究概要 |
我々が作製した金属アレルギーモデルマウスを用いて以下の実験を行った. まず,腹腔と耳介にニッケルを2回投与する方法でマウス耳介にアレルギーを発症させ,耳介腫脹量を測定しアレルギー発症を確認した.次に耳介をホモジナイズしてフローサイトメーターにて皮下に浸潤している細胞分画を細胞表面分子の発現を指標にして解析した.その結果,浸潤細胞の主体はCD3陽性細胞(T細胞),CD11C/MHC class II陽性細胞(樹状細胞)であることが明らかとなった.なお,CD19陽性B細胞の浸潤もわずかに認めた.コントロール群(OVA,チタン投与)と比較して,ニッケル投与耳介皮下に浸潤する樹状細胞数が有意に多いことも磯認した. また,耳介皮膚凍結切片を免疫組織科学にて観察したところ,フローサイトメトリーの結果同様にCD3陽性細胞の皮下浸潤が確認された. アレルギー発症マウスの耳介上皮下に浸潤する細胞は主としてCD3陽性T細胞と樹状細胞であるが,NK細胞およびNKT細胞の浸潤も有意に上昇していることも認められた. 上皮下に浸潤している細胞の分画をさらに詳しくフローサイトメトリーと免疫組織科学で検討すると,皮下浸潤細胞中にFoxp3陽性TregとCD11陽性樹状細胞の数がコントロールと比較して優位に増加していた. そこで,正常マウスより抽出した制御性丁細胞(Treg)をニッケルアレルギーモデルマウスに投与したところ,ニッケルアレルギーの抑制効果を認めた. 今後,金属アレルギー発症時の細胞浸潤パターンと,これまでに得られたサイトカイン産生パターンを比較検討し,病態の主体を担う免疫細胞同定してその動態を詳しく検討することで,モデルマウス上でアレルギー発症を実験的にコントロールすることが可能になると考える.
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