研究概要 |
歯科領域では、治療の多くが「性体組織を除去し、代替物質で修復する」手法によるため、外来物質と生体との多様なインターフェースが存在する。なかでもインプラント-組織インターフェースには、未解明な事象や、解決すべき問題点が多数存在する。 本研究では、インプラント-組織インターフェースの結合強化を達成するため、 (1) 生体からのアプローチ(組織の分化増殖促進を通してインターフェースを強化) (2) 材料からのアプローチ(材料表面の組織親和性向上を通してインターフェースを強化) の双方向のアプローチを行い、よりよい口腔インプラント-生体インターフェース構築のためのデータを得ることを目的とする。本年度は下記の2つの解析を行った。 1: 歯肉-チタンインターフェースにおける接着構造物発現と外来因子透過性の検討 上皮細胞をチタン上で培養し、接着構造物の存在について免疫蛍光法を用いて把握した結果、チタン上では接着構造物の形成が弱いことが示唆された。そこで接着構造物の形成促進剤として、ラミニンの分泌を促進する数種の薬剤の効果について検討を行ったが、明確な効果は見られず、来年度以降さらに検討することとした。 次に動物実験においてインプラントをラット顎骨に埋入し、2,4週後にインプラント周囲歯肉溝にHRPを塗布し、標本作製後HRPを染色したところ、上皮細胞とチタンの接着は歯と比べて弱いことが示唆された。 2: 骨-チタンインターフェースにおける骨新生に関する研究 ラット脛骨にインプラントを埋入し、インプラント埋入と同時にキャリアに含浸させたスタチンを投与した。1,2,4週後に組織標本を作製し、インプラント周囲新生骨に対するスタチンの効果を検討したところ、徐放試験において良好な長期徐放性を示したポリ乳酸ポリグリコール酸共重合体マイクロスフィアが、生体内においても良好にインプラント周囲骨形成を促進することが明らかになった。
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