研究課題
本年度(~平成23年3月31目)の研究実績これまでに歯髄幹細胞を採取技術および細胞凍結方法の最適化が終了している。本年度は歯髄幹細胞をもちいた全身疾患の治療法開発を研究中心とした。【ラット脊髄損傷モデルの機能回復】脊髄の完全切断を行った後、一週間の経過観察を行う。免疫抑制処理を行いつつ、切断部位に106個程度の歯髄細胞を局所注入する。切断面はフィブリンで覆う。術後管理を行うとともに、下肢運動機能の回復をBBBスコアーで評価する。切断面の組織学的回復を軸索伸張、炎症細胞の集積、瘢痕形成を指標にして評価する。パッチクランプ法にて、電気生理的に機能回復を評価する。機能回復向上を目指して、歯髄幹細胞をシュワン細胞等に分化誘導した後に移植実験を行い、分化誘導細胞の治療効果を評価した。【研究成果】中枢神経は脊髄損傷、脳虚血、神経変性疾患などにより深刻なダメージを受ける。これまでこれら難治性神経疾患に対する有効な治療法はなかった。我々は、ヒト乳歯、および智歯永久歯に含まれる幹細胞を用いた難治性神経疾患治療の開発を目指してきた。これまでに名古屋大学医学系研究科・倫理委員会の承認を受けて、口腔外科学講座で脱落乳歯・抜去した智歯から幹細胞を採取した。性状解析と神経再生機能について解析を行った結果、これら幹細胞は難治性神経疾患に優れた治療効果を発揮するための下記4つの性質を兼ね備えていることが明らかとなった(第9回再生医療学会発表、演題P-134;ラット脊髄完全切断モデルにおけるヒト歯髄細胞移植効果の検討:第31回日本炎症再生医学会発表、ワークショップ「組織幹細胞による難治性疾患治療の現状と未来」:第52回歯科基礎医学会発表、ワークショップ「ラット脊髄完全切断モデルにおけるヒト歯髄幹細胞移植効果の検討」)。(1)神経保護作用:組織損傷による神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイトのアポプトーシスを強力に抑制する。(2)神経軸索伸長作用:組織損傷によって切断された、神経軸索を伸長し、新たな神経ネットワークの形成を促進する。(3)神経幹細胞様の分化能:神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイトへの分化誘導に高い反応性を示す。(4)移植安全性:自己幹細胞であるため、移植における安全性が高く、倫理的問題も極めて少ない。さらに、脊髄を完全に切断した「ラット脊髄損傷モデル」を用いて検討した結果、急性期における歯髄幹細胞の移植によって下肢の運動機能が回復するという、驚くべき治療効果を見いだした。特許出願済み[発明課題]歯髄幹細胞を用いた神経疾患治療用組成物、特願2010-092585、出願日2010年4月13日。損傷した末梢神経は再生しやすいが、中枢神経が再生することはほとんどない。中枢神経損傷では「グリア瘢痕」や「挫滅した髄鞘」が、コンドロイチン硫酸(CSPG)やミエリン蛋白(MAG)などの中枢神経再生阻害因子を産生し、神経再生が起こりにくい生体内環境を作り出す。我々は「歯髄幹細胞の培養上清が中枢神経再生阻害因子による神経細胞死を抑制し軸索伸長を促進する」ことを見いだした。
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