研究概要 |
本年度は、前年度の骨分化誘導したマウスiPS細胞を免疫抑制ラットの歯周組織欠損部への移植の結果が得られたため、その解析を行った。また、次年度に予定していたヒト歯肉線維芽細胞からiPS細胞を作製し、その特性の確認を行った。まず、骨分化誘導したマウスiPS細胞をラット歯周組織欠損部へ移植し,組織学的評価を行った結果であるが、ラット歯周組織欠損モデルにおいて、iPS細胞移植は皮質骨上の骨形成を増加させるのみならず,一部セメント質の形成を伴った組織像が観察された。このことから、歯周組織再生における細胞ソースとしてiPS細胞の可能性が示唆された。なお、本研究では、iPS細胞移植によるテラトーマの形成は認められなかった。次に、ヒト歯肉線維芽細胞からのiPS細胞作製であるが、Oct3/4, SOX2, KLF4, LIN28, NANOGの5つの遺伝子発現用レトロウイルスベクターを用いたレトロネクチン法にて行った。その結果、3クローンが得られた。いずれも未分化マーカーの1つであるアルカリフォスファターゼ染色に陽性であった。もとの歯肉線維芽細胞との遺伝子同一性試験(STR解析)を行ったところ、2クローンにおいては一致したが、1クローンには異常が認められた。得られた歯肉線維芽細胞由来iPS細胞においてES細胞のマーカー(Nanog, KLF4, 0ct3/4, Sox2, DPPA4, Rex1)をRT-PCR法にて確認したところ、全てのマーカーが陽性であった。さらに、歯肉線維芽細胞由来iPS細胞をマウスの精巣に移植しテラトーマ作製試験を行った。8週間後に摘出し組織切片を作製した後、HE染色にて観察したところ、外胚葉、中胚葉、内胚葉系の細胞に分化していることが確認された。このことから、我々が作製した歯肉線維芽細胞由来iPS細胞は多分化能を持つことが確認された。今後は、この歯肉線維芽細胞由来iPS細胞を用いて歯周組織再生に関して、詳細な解析を行っていく予定である。
|