研究課題
ヒト単球様細胞THP-1(理研細胞銀行)をフォルボースエステル誘導することによってマクロファージに分化させ遷移金属イオンとチタン粒子を配合する細胞培養液で培養し、生じる細胞傷害を多面的に評価した。具体的な研究成果は下記の通りであった。(1) IC10%濃度の銅イオンを配合する試験培地で培養したマクロファージでは2種類の炎症性サイトカイン(TNF-αとIL-1β)と活性酸素除去酵素(SOD)の産生量に有意な増加が認められた。IC10%濃度の銅イオンはDAPI蛍光染色から核に膨潤、断片化等の障害を生じさせ、8-OHdG免疫染色から遺伝子に酸化的損傷を生じさせ、HEL免疫染色からLOOH・による脂質損傷を生じさせることが示唆された。TEM観察から、IC10%濃度の銅イオンはマクロファージを泡沫化し、核に退行性変化を生じさせることが判明した。銅イオンの細胞内の有意な局在は認められなかった。(2) 異なる濃度の銅イオンを配合する試験培地で培養したマクロファージからtotal RNAを採取し定量PCRによって遺伝子発現を調べたところ、銅イオンのメンブレントラフィッキング輸送に関係する複数遺伝子(ATOX1,ATP7A,SLC31A1等)の発現が銅イオン濃度依存的に増加することが確認された。(3) IC90%濃度の銅イオンを配合する試験培地で培養したマクロファージから可溶蛋白質を採取しMALDIToff-mass質量分析を行ったところ、銅イオンが細胞内で蛋白質を変性させ、同時に変性蛋白質の修復を促すHSP70系蛋白の発現を増加させることが確認された。(4) マクロファージはサブミクロンサイズのチタン微粒子を貪食しファゴゾーム内で微細化することが確認された。この時、多量の炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6とIL-1β)を産生し周囲組織や遠隔臟器に傷害を及ぼすことが示唆された。
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