研究課題
ヒト単球様細胞THP-1(理研細胞銀行)をフォルボースエステル誘導することによってマクロファージに分化させ、銅イオンによる細胞傷害を多面的に評価した。具体的な研究成果は下記の通りであった。(1)銅イオンがマクロファージの3つの銅イオン輸送蛋白質(チャンネルとトランスポーター)の遺伝子発現に及ぼす影響を調べた。細胞膜に存在し細胞外から細胞内へと銅イオンを導入するトランスポーターのSLC31Al遺伝子(CTRI遺伝子)、細胞膜から小胞体(ER)へ銅を輸送するシャペロンATOX1の遺伝子と銅イオンをER内に導入するトランスポーターATP7Bの遺伝子の発現はいずれも銅イオン量の増加に律い一旦増加し,100micro-mol/L以上では低下した。銅イオンが十分排出されないと酸化ストレスが増大し濃度依存的に細胞生存率を低下させると考えられた。(2)IC90濃度銅イオンによって5つの蛋白スポットが有意に発現増加した。質量分析の結果、そのうち4つの蛋白スポットがHeat Shock 70kDa Protein(HSP70)1A/1Bに起因することが確認された。IC90濃度銅イオンはマクロファージ内で蛋白質を変性(架橋、フォールディング妨害)するため、HSP70が多量に産生され蛋白質の変性による悪影響を防ぐ働き(防御)が生じたと考えられた。定量PCR実験結果でもHSP70の合成を誘導するHSP1A/1B遺伝子の発現が50倍程度増加することが確認された。MT1A遺伝子とHMOX1遺伝子の有意な発現増加とRAD51遺伝子の発現低下も観察された。IC90濃度銅イオンは金属イオン解毒蛋白と酸化ストレス緩和蛋白の発現増加を誘導するものの、DNA傷害(DNA strand break)修復酵素の産生低下をもたらすと考えられた。
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