研究概要 |
Bisphosphonates(BPs)は骨に強く結合し,破骨細胞による骨吸収を抑制する薬物である.窒素を分子内に持つBPs(NBPs)は,窒素を持たないBPs(non-NBPs)よりも遥かに強力である.しかし数年前から,NBPsが顎骨に壊死を起こし,その露出をもたらすことが次第に明らかとなり,現在,大きな問題となっている.有効な予防・治療の方法はない.私達は顎骨壊死の問題が起る遥か以前より,NBPsが炎症性の副作用を持つことに注目し,マウスを用いた研究を続けてきた.その結果以下を明らかにした.(a)NBPsはマウスで炎症作用を示し,non-NBPsに炎症作用は見られない.(b)NBPsの炎症作用をnon-NBPsが抑制する.(c)Non-NBPsのetidronateはNBPsの骨吸収抑制作用も抑制する.しかし,non-NBPsのclodronate(Clo)は抑制しない.これらの発見に基づき私達は,etidronate(Eti)はNBPの代用薬として,また,clodronateはNBPとの併用薬として応用できると提案してきた.本年度は2つの論文で以下を明らかにした.(1)CloとNBPとの併用は,NBPsの骨吸収抑制作用は維持したまま,NBPsの炎症作用のみならず壊死作用も強く抑制する.その機序として,CloはNBPsの軟組織細胞内への取込みを抑制することが示唆された.これらの結果は,CloとNBPの併用は,NBPがもつ強い骨吸収抑制作用を維持しつつ,NBPsによる炎症・壊死を予防し,CloのNBP併用薬としての有効性を強く示唆する.(2)NBPsによる顎骨壊死の患者(骨粗鬆症)2名に,Etiへの切り換えを行ったところ,痛み・排膿などの炎症症状は速やかに軽減・消失し,壊死の進行も止まった.これらの経過はEtiのNBP代用薬としての有効性を強く示唆する.
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