研究課題
ヒト口腔扁平上皮癌(OSCC)に対して強い腫瘍融解性を示す単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)ベクターを作製するため、神経毒性遺伝子である_<γ1>134.5を欠失させLacZを組み込んだR849と細胞融合能を有し病原性が低下したHF株をVero細胞に重感染させ、X-gal染色陽性でしかも細胞融合を示すウイルスを分離した。これらを純化して、OSCC細胞で安定して細胞変性効果を示す組換え体を獲得し、RH1、RH2と命名した。ウイルス粒子からDNAを抽出し、制限酵素切断パターンを比較したところ、RH1はHF、RH2はR849と近似していた。標準株である17株とHF10株との間で差異がみられる遺伝子を増幅しシーケンシングしたところ、RH1は_<γ1>34.5遺伝子を保有し、RH2は欠失していること、組換え体に特有の変異を持つことが分かった。RH2は親株よりも大きな細胞融合体を形成し、_<γ1>34.5を欠失するため、OSCCの治療用ベクターとして有用性が高いと考えられた。遺伝子導入法の新たな方法として、ソノポレーションが開発されている。これは、超音波によって一過性に細胞膜に小孔を形成して、細胞外の物質を取り込ませる技術である。R849の吸着10、30分後に超音波照射を行い、その後洗浄にて未吸着ウイルスを除去してブラック形成を行ったところ、ブラック数は非処理対照と比較して有意に増加した。超音波照射時にマイクロバブルを存在させるとその効果はより顕著となった。ソノポレーションは腫瘍融解性ウイルスのOSCC細胞に対する感染効率を高めることが示唆された。
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