8週齢Jcl-ICRマウスからネンブタール麻酔下に採取した舌筋を酵素液(Collagenase+DNase)にて処理後、自動磁気細胞分離装置(auto MACS(R))を用いてSca-1陽性細胞を収集し、増殖培地(MACS)を用いて培養し、骨分化誘導培地(MACS)にて培養後、幹細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞それぞれのマーカーと、骨関連蛋白の発現をWestern blotならびにELISAにて、石灰化細胞外基質の発現をアリザリンレドS染色ならびにvon Kossa染色にて検索し、マウス舌筋由来幹細胞から骨への分化誘導につき評価した。その結果マウス舌筋から舌筋由来Sca-1陽性細胞は、筋細胞の4.0%以上採取可能であった。また舌筋由来Sca-1陽性細胞を骨分化誘導培地処理することにより、経時的な間葉系幹細胞マーカー(Sca-1、c-kit)と前骨芽細胞マーカー(Osterix)の発現減弱が認められ、分化のマスター遺伝子(RUNX2)蛋白の発現増強ならびに骨芽細胞マーカー(Alkaline phosphatase)の発現増強が認められた。さらにSca-1陽性細胞の骨分化誘導培地4週間処理ではアリザリンレドSならびにvon Kossa陽性の石灰化細胞外基質の形成が認められた。以上の結果からマウス舌筋由来Sca-1陽性細胞は、骨芽細胞への分化能を有しており、骨再生に有用である可能性が示唆された。 また、骨再生医療において骨髄組織由来の幹細胞は広く用いられているが、骨髄組織採取による侵襲が大きく臨床応用に際して制限される。一方舌筋由来幹細胞は舌筋の採取が比較的簡便かっ低侵襲であり、また最近本学において舌筋から心筋再生に成功するなど、舌筋に多分化能幹細胞の存在が示唆されていることから、舌筋由来幹細胞による骨再生が実現化すれば骨再生医療の向上が期待できるので、重要性は大きいものと考えている。
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