歯根の再生医療を細胞生物学的に実現するには、拒絶反応の回避のため、歯根吸収が惹起された患者本人から歯を抜歯しcementoblastを単離しなければならないという大きな制約があった。最近、ES(embryonic stem)細胞に変わる有力な多分化能を持つ細胞として、ヒトiPS(induced pluripotent stem cell)細胞が注目を受けている。本研究課題の目的は、iPS細胞の多分化能を利用してcementoblastの単離に必要な抜歯を回避し、歯根再生を実現させることである。 そこで初年度として、ヒトiPS細胞の樹立を目的とした。当初iPS細胞作製を計画し、遺伝子導入を行っていたが、2001年夏季より京都大学がiPS細胞の提供を開始したため、これを利用して研究を開始した。 ヒトiPS細胞維持のため、マウス胎児線維芽細胞をfeeder細胞として用いて、培地中にFGF-2を添加した。この培養系では安定したiPS細胞の維持が可能であった。 次に、ヒトiPS細胞を分化させDSPP遺伝子発現細胞に分化誘導させることとした。そのためには、feederであるマウス胎児線維芽細胞とヒトiPS細胞の遺伝子発現を識別できる種特異的プライマーの設計が必要であった。そこで、DSPP遺伝子とhouse keeping geneであるGAPDH遺伝子に関して、ヒト配列のみ認識しマウス配列を認識しないTaqManプローブを設計した。
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