研究概要 |
研究1咀嚼形態の変化が海馬歯状回神経幹細胞に与える影響と各種NOSアイソザイムの発現との関係 ラットを固形飼料群(n=7),粉末飼料群(n=7)および抜歯+粉末飼料群(n=7)の条件下で18週齢まで飼育を行った。海馬歯状回の分裂細胞を定量するため,BrdU(70mg/kg)を1日1回3日間連続的に腹腔内投与した。その後,18週齢時まで飼育し,BrdU陽性細胞数,各NOSアイソザイム陽性細胞数を調べた結果,粉末飼料群および抜歯群では固形飼料群と比較し,BrdU陽性細胞数の有意な減少が認められた。また,nNOSおよびiNOS陽性細胞数の有意な増加を認めたが,eNOS陽性細胞数は変化がみとめられなかった。 研究2硬質飼料及びかじり木が海馬歯状回に与える影響 生後5週齢のマウスを,普通飼料群(n=36)と硬質飼料群(またはかじり木群)(n=36)の2群に分け,BrdU投与直後とBrdU投与5週間後のBrdU陽性細胞数を調べた結果,硬質飼料投与群では,BrdU投与直後では,BrdU陽性細胞数には変化はなかったが,BrdU投与5週間後において,硬質飼料群のBrdU陽性細胞数が有意に増加していた。かじり木を与えた群でも同様の結果が得られた。 以上のことより,研究1では,抜歯群の海馬歯状回におけるNSCs数の減少に,NOが関与し,nNOSやiNOSが関係している可能性が示唆された。研究2では,咀嚼の誘発実験を行い,海馬歯状回における神経幹細胞の分裂・生存状況を調べたところ,咀嚼は神経幹細胞の分裂数には影響せず,分裂した神経幹細胞の維持に関与していることが示唆された。 今回の研究により,外部環境因子がニッチに影響を与え,神経幹細胞の増減に何らかの影響を与えた可能性が示唆された。
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