研究概要 |
歯髄細胞は,多分化能を有し,さらに脱落乳歯や智歯,抜去歯などから採取可能であるため,再生医学において有望な材料である.本研究は,歯髄細胞を用いた再生医療の実現を最終目標とする.当初の計画に基づき平成22年度は,歯髄細胞における高石灰化能の責任因子候補の機能解析を行った.前年度のマイクロアレイ解析の結果より,培養歯髄細胞は骨芽細胞に比べて,カルシウムおよびリン酸の濃度調節因子(annexin A8及びSlc20a2)のmRNA発現が高く,石灰化に有利であることが示唆された.骨芽細胞の石灰化はBMPに依存していた。一方歯髄細胞は,BMP非添加およびBMPアンタゴニストであるNoggin存在下においても,高い石灰化能を示した.1.そこで骨芽細胞にannexin A8及びSlc20a2をそれぞれ過剰発現させたところ,BMP非存在下においても著しく石灰化するようになった.特にannexin A8の過剰発現による石灰化亢進が顕著であった.2.一方,培養歯髄細胞においてsiRNAによりannexin A8及びSlc20a2の発現をそれぞれ抑制すると,石灰化能が著しく低下した. 以上,22年度における研究により,歯髄細胞はannexin A8を介して,高い骨再生能力を発揮する特徴的な細胞であることが明らかとなった。23年度は,annexin A8のプロモーター活性を制御する転写因子を探索し,歯髄細胞分化マスター制御転写因子を同定する予定である.
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