研究課題/領域番号 |
21390556
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
西村 英紀 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (80208222)
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研究分担者 |
浅野 知一郎 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70242063)
安孫子 宜光 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (70050086)
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キーワード | 軽微な慢性炎症 / 肥満 / 歯周病 / 喫煙 / レプチン / 動脈硬化 / マイクロRNA / sICAM-1 |
研究概要 |
先行研究において、歯周病による軽微な慢性炎症反応が全身性に増幅される機序として、脂肪細胞-マクロファージ相互作用が重要な役割を果たすことを明らかにした。脂肪細胞-マクロファージ共培養系に低濃度LPSが作用すると脂肪細胞におけるレプチン遺伝子発現が著明に抑制されることを見出した。さらにこの現象はLPSのみならずニコチンによっても惹起されることを明らかにした。一方逆に、intercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)の発現は、LPSによって発現が増強することを明らかにした。これらのin vitroにおける現象が生体で起こり得るかどうかを明らかにするため、喫煙者と非喫煙者間で血中レプチン、可溶性ICAM-1(sICAM-1)濃度を比較したところ、肥満者では有意に喫煙者でsICAM-1濃度が高く、レプチン濃度が低かった。すなわち、肥満喫煙者や歯周病保有者などの内毒素血症頻発者では肥満が解消されにくい環境にあるうえに、さらに炎症細胞の血管壁への付着を促進する分子の血中濃度が亢進しており、動脈硬化が一層進行する可能性が示唆された。これらの現象は脂肪細胞単独では効果があまり観察されないことからマクロファージの存在が非常に重要であることが示唆された。 そこで脂肪細胞-マクロファージ相互作用で炎痒反応が亢進する分子基盤をマイクロRNAの動態からとらえることを計画し、同分子の網羅的な解析をマイクロアレイの手法を用い発現解析するとともにパスウェー解析を試みた。本結果については未発表データであるため詳細は割愛するが、次年度以降着目する分子群を絞り、その機能を解析することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請は歯周病のような軽微な炎症性疾患が全身性に増幅される機序を脂肪細胞-マクロファージ相互作用に求め、その結果生体にもたらされる副作用を明らかにし、歯周疾患の老化促進作用を分子レベルで明らかにしようとするものである。結果、研究開始当初想定した炎症関連分子のみならず、レプチンなどの当初予想しなかった分子も影響を受けることが明らかとなり、研究の幅が広がった。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪細胞-マクロファージ相互作用におけるマイクロRNAの機能解析を推進し、炎症反応等の副作用を制御できるシステムを開発すること、また類似の機序が外因性の分子(とりわけ自然界に存在する安全な食品成分等)によってもたらされるか否かを明らかにすることで、不老医学推進の一助となると期待される。
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