55~74歳の閉経後の成人女性674名を対象とした。食後6時間を経過した状態で採血を実施し、-40℃で保存した後、血清中オステオカルシン、NTX、シスタチンCを測定した。シスタチンCについては腎臓機能、特に糸球体の濾過機能を評価する指標で、筋肉量や年齢に左右されないことが分かっている。シスタチンCの濃度で0.91mg/L以上を腎機能の低下した状態とした。質問紙により、喫煙状況を把握すると伴に、身長および体重からBMIを測定した。口腔内状態としては残存歯数、および特定10歯に対し1歯あたり6点計測でクリニカルアタッチメントレベルを測定した。 腎臓機能と現在歯数との関連を評価するため、重回帰分析を実施した。現在歯数を従属変数に、血清中シスタチンCレベル、平均クリニカルアタッチメントレベル、血清中NTXレベル、年齢、BMI、および喫煙経験(0:経験無し、1:過去に喫煙経験有り、または現在喫煙中)の6項目を独立変数に選定した。今回の調査では血清中NTXとオステオカルシンで相関が強かったので、血清中NTXのみを投入することとした。その結果、現在歯数は他の5変数で調整した後であっても血清中シスタチンCレベルと統計学的に有意な関連が示された。標準偏回帰係数は-0.11(p=0.018)であった。このことは、血清中シスタチンCレベルが高いほど現在歯数は少ないことを意味している。つまり、腎機能が低下するほど歯の喪失がすすむことが考えられる。また、本調査では平均クリニカルアタッチメントレベルが、現在歯数および血清シスタチンCレベルと統計学的に有意に関連していることも確認した。腎機能は骨代謝に影響をおよぼすことから、腎機能の低下は歯周組織に影響し、結果として歯の喪失に繋がることが考えられた。次年度では腎機能と歯周組織等に対する影響の経年的評価も含めたさらなる調査を実施する予定である。
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