介護予防プログラムに口腔ケアが導入されて以来、口腔ケアと全身機能との関係が強く指摘されるようなった。本研究では、一般健常高齢者と老人保健施設に収容されている高齢者において、ブラッシングしない時とブラッシング直後に2種類の認知機能検査(MMSE、かな拾いテスト)および2種類の先端医療技術(磁気共鳴機能画像法(fMRI)と光トポグラフィ)を用い、ブラッシングによる前頭前野の賦活と再生及び認知機能の向上を世界に先駆けて解明し、口腔ケアの神経科学的意義を社会にアピールすることをゴールとした。 本研究目的を達成するために、本年度(平成23年度>は、高齢ボランティアにおいて、かな拾いテスト時の前頭前野のfMRIシグナルを計測し、ブラッシング前とブラッシング後で比較した。また、光トポグラフィを用い、ブラッシング前とブラッシング後において、かな拾いテスト時のヘモグロビン濃度の変化を比較した。 その結果、以下の成果が得られた。 1.高齢者にブラッシングを施すことにより、これまでと同様に。MRSE(Mini-Mental Status Examination)とかな拾いテストのスコアが上昇した。 2.高齢ボランティアにかな拾いテストを提示した際の前頭前野のfMRIシグナ強度は、ブラッシングを行った後の方が増強されることがわかった。 3.高齢者に同様のタスクを提示したときの光トポグラフィでの酸化ヘモグロビン濃度は、ブラッシング前に比べブラッシング後の方が高まる傾向を示した。 以上の結果より、高齢者に「ブラッシング」を施すことにより前頭前野が賦活され、神経認知機能が向上することが示唆された。
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