研究課題
本研究課題において、我々は歯根膜繊維芽細胞からiPS細胞の誘導に成功した。その樹立方法はOct 3/4,SOX2,Lin 28,Klf 4,Nanogの4つの遺伝子をレトロウイルスベクターを用いて遺伝子導入することによってES細胞様の形態を有する細胞にアルカリフォスファターゼ染色によりスクリーニングを行い、さらに幹細胞マーカーの発現を遺伝子レベル、タンパクレベルで確認を行った。その結果として5つのiPSクローンを得た。これらのクローンに対してin vitroで脂肪細胞、神経細胞、軟骨細胞、骨芽細胞への誘導を行い、樹立したiPS細胞が脂肪細胞、神経細胞、軟骨細胞、骨芽細胞への分化能を有していることを確認した。さらに我々が樹立したiPS細胞をSCIDマウスの腹腔内に注入し、テラトーマを形成させた。その結果、脂肪様組織、神経様組織、筋肉様組織、上皮および管空様組織、軟骨様組織が観察され、テラトーマの形成が確認された。しかし、上記の典型的な組織像の他、未熟な組織が多数観察された。具体的には未熟な間質をはじめ、未熟な軟骨および分化傾向不明の腺管構造、やや未熟で粘液腫様の間質、胎児組織に類似した粘液腫様の間質、未熟な腸管構造、分化が明かでない腺上皮と分化が不明な胎児性組織の構造などが多数観察された。上記の観察結果から、iPS細胞をそのまま生体内に注入し組織形成を誘導しようとした場合、未熟な細胞、組織から、腫瘍が形成される可能性が示唆された。また、iPS細胞の核型を精査したところ、多くの細胞で染色体の欠損が認められた。このような核型異常を示す細胞が一定の細胞や組織に分化する可能性があるため、今後はさらに特定の細胞に分化させた後にSCIDマウスをはじめとする生体内への移植によって未熟な細胞、組織形成、さらに核型異常を精査する必要がある。
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