研究概要 |
既にメンタルケア体制が整っている東北大学病院助産師外来の実態を把握し、今後新たにメンタルケア体制を整える助産師外来のための予備データとするために、助産師外来を利用した160名の妊婦を調べた。10代の妊娠、初診時の未婚者、離婚歴のある者、教育歴12年未満の者、精神科既往歴のある者、神経症傾向である者といった、産後うつ病のリスク因子と言われている因子を持つものが多くみられ、助産師外来利用中の妊婦は産後うつ病ハイリスク群である可能性が示唆された。産後1カ月のEPDSが9点以上であったのは46名と産後うつ病の疑いのある者が高い割合で存在することが明らかになった。そこで、助産師外来を利用する妊産褥婦の抑うつ・不安、乳児に対する感情、妊産褥婦のおかれた心理社会的状態を調査し,心理的なサポート体制の構築へ向けての基礎的なデータを収集することを目的として、宮城県内の助産師外来を利用した妊産褥婦95名に対し,(1)HADS日本語版,(2)対児感情尺度,(3)周産期チェックシートの質問紙調査を行った。その結果、HADSについては、強い抑うつの疑いがある者が2名、強い不安の疑いがある者が7名いた。周産期チェックシートから、「妊娠経過や出産についての心配」、「マイナス思考」においてHADS不安および抑うつの得点が高く、「完壁主義」、「経済的な不安」においてHADS不安得点が高く、「実母が頼れない」においてHADS抑うつ得点が高かった。「マイナス思考」、「妊娠経過や出産についての心配」において対児感情尺度回避得点が高かった。このことから、助産師外来利用の妊産褥婦に強い抑うつ・不安を示す者がおり、妊産褥婦のおかれた心理社会的状態について把握することができた。
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