本年度は、地域社会における化学物質過敏症に関する知識の普及を目的とし、一般市民を対象とした勉強会をクリニックに併設した多目的スペースで開催した。この勉強会はメディカル・カフェという形式で、「化学物質と過敏症」、「シックハウス症候群」、「シックスクール」、「体に優しい生活~洗うということ~」というテーマで計4回行った。いずれの回も、患者または家族、看護学生、地域住民が5名~10名参加し、講義とディスカッションが行われた。当該疾患の持つ社会的意味は、患者や家族という当事者でないと理解が困難なことを考えると、健康な人々の参加があったことが評価できる点であった。 さらに、6月より、クリニック内において、医師やその他の専門職者とミーティングを行い、化学物質過敏症の診療システムについての話し合いを繰り返した。これにより、診察料、診察時間、クリニックの宣伝活動、医師の診察と看護師による相談の兼ね合い等に関した課題が浮上した。今年度は、クリニックを窓口として相談者を募ったが、実際の相談者(受診患者)は5名であり、いずれの患者も他県からの相談者であった。地域社会における看護支援活動の展開のあり方を考える必要性や、患者に関するデータの収集目的においては、今後の研究期間内に看護相談のシステムに修正を加える必要があることが明らかになった。 また、化学物質過敏症やシックハウス症候群に関する国際的な知識の普及と社会的理解の促進のために、『Sick Building Syndrome.In Public Building and Workplaces』において、"Psychosocial Factors that Aggravate the Symptoms of Sick Building Syndrome and a Cure for Them""Necessity of Counseling Institutions for Sick Building Syndrome Patients""Is it Safe Enough to Depend on Ventilation?Recommendation of Radical Measures for Addressing Sick Building Syndrome"の3章を執筆し、日本における当該問題の実情を報告した。
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