研究課題/領域番号 |
21390572
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
宇城 令 自治医科大学, 看護学部, 講師 (40438619)
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研究分担者 |
河野 龍太郎 自治医科大学, 医学部, 教授 (90468330)
市田 勝 自治医科大学, 医学部, 講師 (30306146)
長谷川 剛 自治医科大学, 医学部, 教授 (10291634)
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キーワード | 転倒・転落 / 医療安全 / 協働 / 患者・家族 / チーム医療 |
研究概要 |
本研究の目的は患者や家族自身にも転倒・転落の危険性と予防の重要性を理解し、医療者とともに医療に参画することで、自ら転倒・転落を回避し患者自身の安全への責任を医療者とともに共有することを促す両者の協働的な取り組みに関するシステムを開発することである。本年度の取り組みを以下に示す。(1)平成21年度から開始した患者の性格的特性や危険な姿勢・行動に関するパンフレット配布(2)患者・家族が患者の身体的状況を客観視する自己チェックシート配布、(3)外来部門での既存DVD放映、(4)病棟内転倒ハザードマップ貼用、以上(1)~(4)を継続し実施している。これらの評価は、転倒率、患者調査(取り組み前・6か月後・1年後)、職員調査(取り組み前・1年後)とした。 これらの結果、全体の転倒率は(1)~(4)実施前1.79‰、実施後2.19‰であり、自発的行動による転倒率は実施前0.99‰、実施後0.57‰であった。取り組み6カ月後の患者調査では、患者からの転倒経験に関する情報提供状況は、12.9%から15.0%、転倒予防行動をした人は33.0%から33.5%、ナースコールが必要な人が実際に使用した頻度は、「必ず~ほとんど使用した」人は40.9%から44.2%、「あまり~全くしなかった」人は44.1%から42.3%であった。これらより、ナースコールの使用は若干増加傾向とも考えられたが、毎年40%前後の患者は、ナースコールが必要とされても使用しない現状が明らかになった。これら40%の患者の転倒率を把握するとともに、院内での転倒場所のほとんどが病室内であることから、全病室内への手すりの設置の必要性が考えられた。23年度では、モデル病棟(1病棟)の病室への手すりの設置が終了した。 以上の結果から、新たに患者・家族へ自発的行動による転倒予防DVDを制作し、全病室内へ手すりを設置する予定である。DVDは、病院内で放映および自治医科大学ホームページ上で公開していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、医療者による一方向的な転倒・転落事故予防へのしくみをつくるのではなく、患者・家族にも医療を受ける際の安全に関するルールと責任を共有し、協働して転倒・転落事故予防ができるようにすることである。患者・家族への視覚的な介入を継続的に行っており、その介入の評価について定期的(半年~1年ごと)に行っている。また、医療者への介入は、看護師だけでなく、医師、検査技師、リハビリテーションスタッフ、看護助手を対象とした質問紙調査およびヒヤリングし経過観察を行っている。これらより、院内転倒率は減少していないが、患者の自発的行動による転倒率は若干低下傾向であり、本研究による介入の効果が概ね現れてきていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策については、患者・家族への介入は概ね徐々に効果が現れてきていると判断するが、患者の生活を継続的に支えている医療者の転倒・転落事故予防計画、計画の実施については、まだ始まったばかりである。特に看護職への教育的サポートは必須であり、今後は各職種のニーズや課題にそって介入していく必要性がある。
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