研究課題/領域番号 |
21390579
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
千葉 由美 横浜市立大学, 医学部, 教授 (10313256)
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研究分担者 |
植松 宏 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80100957)
山田 律子 北海道医療大学, 看護福祉学部, 教授 (70285542)
市村 久美子 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (00143149)
戸原 玄 日本大学, 歯学部, 准教授 (00396954)
石田 瞭 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (00327933)
植田 耕一郎 日本大学, 歯学部, 教授 (80313518)
唐帆 健浩 杏林大学, 医学部, 准教授 (90508293)
平野 浩彦 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), その他部局等, その他 (10271561)
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キーワード | 摂食・嚥下 / 質保障 / 誤嚥性肺炎 / 包括ケアシステム |
研究概要 |
医療の質保障の観点から、同一施設内における統括した看護ケア提供を改善することによって患者利益が得られるか試みた。対象施設は600床以上の高齢者専門急性期病院で、これまでに作成した摂食・嚥下障害の理解度、実施到達度を確認するための質問紙表(アセスメント17領域68項目、ケア6領域42項目、4段階リッカートスケール)を用い、看護師調査を平成22年度(ベースライン調査)、23年度(介入1年後調査)の合計2回実施した。さらに、患者調査として、同時に疾患、摂食・嚥下に関する病状等(A4、1枚)について3病日、8病日目に受け持ち看護師に記入をしてもらった。調査期間は各年とも3か月間であった。両調査期間の間に摂食・嚥下ケアに関する研修プログラムを企画し、介入した。このプログラムは熟練者によって作成されたものである。両年ともに回答のあった看護師数は279名であった。看護師調査の結果、ベースラインと1年後を比較し、スタッフ全体とスタッフのみのグループで、アセスメント、ケアともに理解度、実施到達度の平均得点が有意に上昇した(p<.05)。また、研修の有無は「なし」65名(23.3%)、「あり」191名(68.5%)であり、両群で比較すると、アセスメント(理解度、実施到達度)、ケア(実施到達度)で有意な上昇が見られた(p<.05)。同時期に行った患者調査では、初年度、次年度ともに対象者の属性はほぼ同様であった。なお3病日目から8病日目にかけて発熱、CRPの異常所見の割合は同様に低くなっていた。さらに、誤嚥性肺炎の診断名を有する患者は、3病日目では初年度、次年度ともに発熱、CRPの値が全患者に対し割合が高かったが、介入後の年で8病日目における誤嚥性肺炎患者のRisk Ratioは著しく低くなっていた。以上の結果について今後、精査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の調査は看護師への介入により患者の誤嚥性肺炎の症状発現をおさえることができるかといった介入比較調査を実施した。この調査は介入効果を効率的に導くためのシステムモデルを探究する基礎的調査であり、調査にかなりの手間と解釈の時間を要する。人材と物理的時間の捻出が困難な状況であったが、試行的調査により良好な結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後、これらの結果から有効な示唆が得て、次なる調査につなげていく予定である。現段階まで調査および分析では、比較的良好な結果が得られている。元来、誤嚥性肺炎の治療を施す急性期病院においては、可視化される効果が見いだせないことも考えられた。しかし、治療管理の行き届いた病院において介入効果が得られた場合、長期療養施設や中間施設、在宅においてはさらなる大きな成果が期待される。そこで、分析を進め、今後は調査対象施設を拡大し、調査したいと考えている。
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