本研究の4年間のプロジェクトとしての目的は、「トータルペインを緩和するセルフケア支援看護モデル」を開発し検証することである。平成22年度は、トータルペインをマネジメントする際のバリアについて引き続き明らかにすると共に、『がん疼痛マネジメントのための患者用セルフケア能力測定尺度』を用いて、患者のセルフケア能力を測定することとした。 1. トータルペインをマネジメントする際のバリアの追求 緩和ケア領域で勤務する看護師の調査から得たデータの分析、がん看護専門看護師、がん看護の修士課程を修了者のエキスパート、ならびに米国のペインマネジメントの研究者からのスーパーバイズにより、バリアとして以下の6点が明らかになった。1)病気や痛みの認知-患者自身の病気の捉え方、病気への治療に対する捉え方、痛みの捉え方、2)知識の不足-痛みのメカニズムや内服薬の知識不足、3)コントロールできていない症状と副作用-強い軽減されない痛み、副作用管理の不十分、種類の違う複数部位の痛み、無力感、4)医療者との信頼関係-医師に見捨てられたくない、5)自律した存在としての保持-依頼への遠慮、お任せ、自分で何事もしたい、6)主観的な症状の表現能力-スケールが使えない、痛みが言語で表現できない、7)家族との関係-家族に主導権がある。であった。 また、疼痛マネジメントのみを行っている患者よりも治療(化学療法または分子標的薬剤)を継続しつつ症状マネジメントと行っている患者も多いため、どの時期の疼痛マネジメントをする患者を対象に研究を進めていくのかを検討する必要があることが明らかになった。 2. 『がん疼痛マネジメントのための患者用セルフケア能力測定尺度』の活用 本尺度は、がんの治療と並行している場合の状況を加味していないため、患者に適応するためには改変しなければいけないことが明らかになった。改変のため計画を次年度に実施する。
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