【目的】本年度は、女性生殖器系がんの治療に伴う合併症や心理社会的問題のアルゴリズム構築に向けたシステマティックレビューを行う予定だった。だが、既存の国内外の文献検索では、女性生殖器系がんサバイバーがどの時期にどのような苦痛を抱くのかが不明確であり、システマティックレビューの方向性が定まらず、CQ(clinical question)立案が困難だった。従って、まず多様な苦痛を術後経過に応じて調査した。子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんで術後治療を終了した患者を対象に自記式質問紙調査を行った。 【結果】現在までに子宮頚がん24名、子宮体がん23名、卵巣がん20名、無記名8名から回答を得た(平均年齢58.9歳)。術直後から治療後までを通して辛さを強く自覚したのは、「夜間覚醒」「不安感」等だった。術直後では「便秘」「残尿測定」「尿意の感覚鈍磨」「足のだるさ」が多かった。化学療法中には治療の副作用である「手足のしびれ」「食欲不振」「吐き気」「嘔吐」が多く、放射線治療中には「腹部はり感」「残便感」「下痢」や、「残尿測定」「尿意の感覚鈍磨」「残尿感」などの排泄に関する苦悩が多かった。術後治療終了後は、強く訴える症状は少なくなり「肩こり」「手足の冷え」が残る程度だった。術後から治療後にかけて多く悩んだことは、「再発」「治療の副作用」「リンパ浮腫」「がんとのつきあい方」「家事や仕事と治療の両立」だった。 【考察・今後の課題】結果より、術直後から治療後に感じる苦痛には経過を通して常に抱くものと、治療に伴う副作用や合併症が主な原因である苦痛が複合的に生じていた。従って、がんサバイバーへのケアは、時期に応じて提供するケアと、経過を通して継続的に行うケアを両側面から検討すべきことが明らかとなった。今後は更に詳細な分析を行った結果を踏まえて、CQを抽出し、システマティックレビューを効率的に進める予定である。
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