研究実績の概要 |
ランダム化比較試験によるテーラーメイドケアの介入研究を行った。テーラーメイドケアは5種類の冊子と3回のセミナーから構成し、3つの研究協力施設にてデータ収集した。アウトカム指標は、医療サービスへの満足度(VAS)、QOL(FACTG、FACT-Cx、FACT-O)、自己効力感尺度、研究者が開発した対処への自信尺度を用いて、介入前、介入後、3ヵ月後に測定した。 ランダム割付では実験群35名、対照群37名となったが、症状増悪等のため実験群の4名が脱落し、最終的に実験群31名、対照群37名のデータを分析対象とした。診断名は、子宮頸がん21%、子宮体がん46%、卵巣がん33%だった。冊子は94%が全部読んだ又はほとんど読んだと回答し、非常に役立った又はまぁまぁ役立ったと全員が回答した。実験群のうち、セミナーⅠ(リンパ浮腫)には93.5%、セミナーⅡ(こころのケアと更年期症状)77.4%、セミナーⅢ(性のライフサイクルと尿や排便の悩み)74.2%が参加した。94%はセミナーが非常に有意義又はまぁまぁ有意義と回答した。介入前の全アウトカム指標で群間に有意差はなかった。2要因の分散分析にて、有意な差が示された尺度はなかった。しかし、各対象者の介入前後の差を活用し、群間の差をT検定で検討すると、FACTG(社会・家族)で有意差があった(T=3.8,P=0.001)。また、実験群内の変化をU検定で検討すると、FACTG(身体)で有意な改善があった(Z=-2.1,P=0.038)。統計的な有意差は示せなかったが、FACTG合計点、対処への自信尺度の改善が示された。 結論として、対照群と比較してテーラーメイドケアを受けた実験群は社会性や家族との関係性において有意な改善が示された。これは、セミナー開催を通して、同じ悩みを抱く者同士のつながりや医療者との関係性の強化により、生じた効果と考えられる。
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