■研究1 先行研究(平成20年度児童関連サービス調査研究等事業:主任研究者上別府圭子)をふまえ、まずは附属病院である東大病院内において、子ども虐待予防のためのシステム作りの基礎調査および試行を、関連各科責任者との会議をもとに計画した。子ども虐待予防における妊産褥婦のメンタルヘルスおよび愛着障害を予測するためのスクリーニング導入に関する研究の計画書および詳細を取り決め、東大医学系研究科の倫理審査委員会の承諾を得た(平成22年3月15日)。平成22年4月よりデータの収集を開始するとともに、研究によって産後うつ病や子ども虐待のハイリスクがスクリーニングされた際には、取り決めに従って臨床へ情報の還元を行った。 ■研究2 1)Attachment Style Interview(ASI)は、社会的なサポートに接近し、それを用いることができる能力に関わる成人のASを測定するものである。面接技術習得のため、入門、中級1、中級2、上級:面接訓練2事例を修了し、研究者のASI技術を確保した。 2)先行研究をレビューした結果、産後うつ病のリスク要因として、妊娠期の抑うつ・不安、うつ症状の既往があり、さらに心理的要因、社会的要因が続くことが判った。産後うつ病スクリーニング尺度は1970年代後半から多く開発され、現在では12尺度が存在する。中でもPrenatal Depression Predictor Inventory-Revised (PDPI-R)は、妊娠期に測定でき予測性のある尺度である。より早くからの予防的介入を可能にする尺度であると考え、原著者の承諾を得て、日本語版作成を行った。その後東大病院通院中の妊婦の協力を得て、PDPI-Rの妥当性の検証に取り組んだ。 3)妊娠期にある女性のニーズを把握するため、当事者のグループインタビューを実施した。妊娠経験をどのようにとらえているか、悩みや相談についてのサポートの実態の把握に努めた。
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