本研究の目的は、口腔機能の健全な発達を促し、良好な母子関係を築くことを目標に、口唇口蓋裂児の母乳育児を可能にすること、口唇口蓋裂児の新しい哺乳支援具を開発し、授乳支援方法を確立することである。平成23年度は、本研究目的遂行のための事前調査として21年度に実施した全国調査結果「口唇裂・口蓋裂治療チームにおける授乳援助に関する実態調査」を日本口蓋裂学会雑誌に投稿発表した。本論文はこれまでになかった視点で緻密にまとめられていると評価され、同学会平成23年度優秀論文賞を受賞することができた。「口蓋裂児の新しい哺乳支援具の開発」に関しては、口蓋裂矯正目的で汎用されている哺乳床(Hotz床)を改良し、従来の口蓋床に比し哺乳効率がよく口腔機能育成にもつながる結果を得、第35回日本口蓋裂学会(平成23年5月、於新潟)で発表した。加えて、2カ月に一回の定例会議で議論を重ねてきた成果として『口蓋裂児用哺乳瓶』の試作品を完成させ、試用評価の結果を第37回日本口蓋裂学会(平成24年5月24日、於京都)にて発表した。開発品は、現在、実用新案出願中である。『哺乳支援マニュアル』は現在、制作中であり、7月には完成予定である。本研究結果は、口唇口蓋裂児の口腔機能発達を促進し、術前・術後の経過や歯科矯正治療を良好にし、口蓋裂児に頻発する中耳炎・難聴を予防することによって医療費の削減効果が期待できる。 本研究成果をさらに発展させるために申請した平成24-27年度文部科研、基盤研究(B)「口唇口蓋裂児の口腔機能発達を保証する哺乳具の開発と療育支援プログラムの構築」は採択され、本研究をさらに継続・発展させることができることになった。プログラム評価のベースライン調査として、24年3月には主たる研究協力施設である聖マリア病院で治療を受けた口蓋裂児の哺乳実態調査を実施し、第37回日本口蓋裂学会(平成24年5月25日、於京都)にて発表した。
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