本研究の目的は、今まで実施してきたインタビューを質的内容分析することによって、1)認知症本人及び家族介護者の不安や疑問の所在、問題解決や行動変容のプロセスを明らかにする。2)上記1)に基づいて、語りのデータを、学術研究や保健医療教育に容易に活用できるように、データベース化する。3)上記2)のデータベースの一部を公開し、認知症本人・家族、一般の人々、保健・医療・福祉(介護)の専門家等が共有して利用できる、精度と信頼性が担保された「認知症の人と家族の語り」Webサイトを構築する。と、いうことである。 2012年10月の時点でのインタビュー実施状況は、認知症本人7名と家族介護者35名の合計42名であった。このうち認知症本人は全員が若年性であり、アルツハイマー型6名(男性5名・女性1名)、脳血管性が1名(男性)という内訳であった。家族介護者については、若年性認知症の家族が14名、認知症高齢者の家族が21名という内訳であった。 これらの逐語録とインタビュー概要は、研究協力者に返送して内容の確認を依頼した。その後、複数の研究者で質的内容分析し、次の6トピックを抽出した。「症状の始まり」・「認知機能の変化~記憶、時間、空間、言語など」・「診断された時の気持ち(若年認知症本人)」・「診断された時の気持ち(介護家族)」・「病院にかかる」・「病気であることを伝える」である。さらに、保健・医療・福祉の専門家による内容確認を得た後、先ず、アルツハイマー型認知症および脳血管性認知症と診断された本人及び家族介護者の語りについて、この6トピックでパイロット版のWebサイトの構築を行った。 今後の課題は、このパイロット版Webサイトの評価を実施し、内容を充実させて一般公開することである(2013年7月予定)。
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