研究概要 |
中国,北京近郊において,表面流出プロットのデータを収集し,表面被覆と表面流出量の関係についてデータを得た。また,近年,森林化が進行している中国四川省塩亭付近の湖沼の土壌サンプリングを行うとともに,斜面における土壌サンプリングを行い,Cs-137,Pb-210exデータを算出し,畑から森林への返還に伴う侵食量の変化について算定した。このような,土地被覆への変化は,土壌浸透能に強い影響を及ぼすことが予想される。そのため,耕地から林地への転換によって土壌浸透能の回復可能性が示されている。研究対象地域(中国四川省塩亭地区)における2時期のLandsat/TM衛星画像(90年7月及び07年5月)を分類した結果,森林の面積は14.6%から28.4%まで増加したことが分かり,今後のリモートセンシングを利用した浸透能評価に道を開いた。 一方,モンゴルにおいては,土地荒廃評価の基本となる,水収支,河川水,湧水,地下水等の現地調査ならびに,試料収集を行うとともに,東北アジア地域における降雨量データ,湖沼の堆積物サンプリングを行い,、土壌侵食量変化について調査を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに,中国,四川省塩亭付近の湖沼の流域内において,斜面土壌と湖底堆積物のサンプリングを行った。Cs-137とPb-210exの放射性同位体分析の結果から,調査地では,退耕還林政策による土地被覆の変化により,耕作地から森林への転換からの経過年数に応じて,斜面の土壌侵食量が減少していることが明らかになった。一方,モンゴル東部のステップ草原の湖沼で採取した湖底堆積物について,現在,放射性同位体分析を行っている。このように,昨年度までに,中国およびモンゴルの湖沼で得られた流域内の土壌侵食履歴の解明のための調査および解析を行った。その他に,中国北京近郊の調査サイトでは,地表被覆が異なる斜面プロットの設置が完了しており,来年度より行う水・土砂流出の観測の準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,モンゴルで採取した湖底堆積物の放射性同位体分析に基づいて,モンゴル草原における土壌侵食・堆積履歴の推定を行う。また,現地で収集した調査地域の水収支,河川水,湧水,地下水等の長期データ,および衛星画像の解析を行い,湖底堆積物による土壌侵食履歴との関連性について考察を行う。同時に,中国および韓国に設置した様々な被覆からなる実験斜面において,自然降雨条件下における水・土砂流出データを観測する。それらのデータに基づいて,地表被覆,土壌物理性が異なる土壌の浸透能と土壌侵食の関連を明らかにする。また,リモートセンシングによって地表面の被覆状況を推定し,浸透能マップを作成するとともに,土壌侵食を指標として広域的な土地荒廃度の評価を行う。
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