研究課題/領域番号 |
21401002
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
溝口 常俊 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50144100)
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研究分担者 |
村山 聡 香川大学, 教育学部, 教授 (60210069)
土屋 純 宮城学院女子大学, 学芸学部, 准教授 (80345868)
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キーワード | 洪水 / 水環境社会 / 農村開発 / バングラデシュ / 地域比較史 |
研究概要 |
本研究は、バングラデシュを実験的フィールドの地とし、洪水の被害を最小限にくい止める新たな21世紀型水環境社会の構築を目指すことを目的とする。4年計画の2年目にあたる平成22年度は、51月22日に広島大学で開催された経済地理学会で、前年度までの調査結果を報告した。その成果は半年後に『経済地理学年報』56-4に掲載された。現地調査は2010年8月と2011年3月にそれぞれ数日間タンガイル県カジラッパラ村に入り、洪水常襲地の日常生活を見聞した。 定期市調査では、女性の買手が急増したことがこの10年の大きな変化であった。夫が中東への出稼ぎで不在となり、結婚後他人には顔を見せない習慣があるイスラム社会においても、女性が外出して買物に行かざるを得なくなったわけで、社会的に大きな問題となっている。家の防備と言う点でも洪水時に弱い社会になってきたと言わざるをえない。 首都ダッカでのセミナー(3月5日)で、日本の木曽川下流の輪中地帯での「水屋」をバングラでも各屋敷地に建造すれば大洪水が襲来しても犠牲者は半減する、と述べたら賛同された。具体的な農村開発として、地元のNGOに協力する形で井戸掘り、植林を行っている。この為の基礎調査として、屋敷地での家族構成の聞き取りを行うと同時に、今回から屋敷地の全植物記録とその利用状況の聞き取りを始めた。 大洪水で毎年犠牲者が出るが、目の前で自分の家が流されても助かった人が多い地区もあった。そこでの聞き取りによると、彼らには洪水予知能力があり、河岸に立った家が崩れ落ちるであろう時期の半年から1年前に、新たな土地を求め、家を解体し、主要な柱や塀を運び、新築の家の一部に使ったという。洪水常襲地の生活の知恵といってよかろう。 本研究にはバングラデシュの洪水常襲地での生活改善に資するという目的があり、そのための比較研究として名古屋大学附属図書館所蔵の木曽川の絵図解読と川奉行日記の翻刻も行った。
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