研究課題/領域番号 |
21401002
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
溝口 常俊 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50144100)
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研究分担者 |
村山 聡 香川大学, 教育学部, 教授 (60210069)
土屋 純 宮城学院女子大学, 学芸学部, 准教授 (80345868)
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キーワード | 洪水 / 水環境社会 / 農村開発 / バングラデシュ / 地域比較史 |
研究概要 |
本研究は、バングラデシュを実験的フィールドの地とし、洪水の被害を最小限にくい止める新たな21世紀型水環境社会の構築を目指すことを目的とする。4年計画の3年目にあたる平成23年度は、雨期と乾期の2度現地に入り、定期市をとおしての農村生活の実態を調査した。 定期市調査では、朝市を中心とした毎日市が増加していた。10年前までは市場には女性はほとんど姿を見せなかったが、今回の見聞で、女性客の増加、とくに朝市への女性の買手が急増したことが目立った。夫が中東への出稼ぎで不在となり、結婚後他人には顔を見せない習慣があるイスラム社会においても、女性が外出して買物に行かざるを得なくなったわけで、社会的に大きな問題となっている。家の防備と言う点でも洪水時に弱い社会になってきたと言わざるをえない。 バングラデシュの農村部では地元のNGOグラムバングラで寄宿し、洪水時でも安全な水が確保できるようにとチューブウエル(井戸)の普及事業に参加している。また研究対象地域の2郡のいずれにおいてもいたるところで村道のアスファルト化が進められていた。この整備によって雨期が訪れるごとに孤立して船でした交通できない集落は少なくなってきている。 洪水常襲地の中では比較的高所森林地帯を訪問したが、そこに多数のトライブが居住していた。一生自宅から数キロ圏外に出たことのない女性が多く、その生活圏は限られていた。彼らはかつて追いやられた側の人々であるが、洪水と無縁で、長命者も多く、幸せそうな生活を送っていた。 本研究にはバングラデシュの洪水常襲地での生活改善に資するという目的があり、そのための比較研究として、輪中の知恵が詰まっている木曽三川地域を取り上げている。その1つとして名古屋大学附属図書館所蔵の木曽川の絵図解読と川奉行日記の翻刻も前年度に引き続いて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
バングラデシュの洪水常習地の農村へ雨期と乾期の2回にわたって訪問し調査することができたこと。対象とする定期市調査では現地での協力体制が良好で質・量ともに予定より多くデータ収集ができたこと。この2点において、当初の計画以上に研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.バングラデシュの洪水常襲地についての現地調査を継続して行う。 2.研究成果を分担者を含めて3人全員が8月にチェコで開催される国際歴史地理学会で報告する。 3.バングラデシュの洪水を中心とした自然災害の全容をとらえるため、現地の英字新聞Bangladesh Observerを活用する。 4.4年間の研究成果をまとめて報告書を作成する。
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