研究概要 |
この研究では,フィリピン共和国,ルソン島南東端に位置するイロシンカルデラの活動史を地熱現象も含めて解明することを目的としている.特に約4万年前に噴出したイロシン火砕流によるカルデラ形成以降に焦点を当てて噴火史研究を進めている.本年度は,次のような研究を実施した.1.研究分担者(小林,田口)や協力者(鳥井真之)および現地の共同研究者であるフィリピン火山地震研究所(PHIVOLCS)のMirabueno博士らと共に現地調査を行った.その結果,火砕流に関連するプリニー式噴火による降下軽石が存在すること,4万年前よりも前の別の噴火による火砕流堆積物がカルデラ内に存在することなどがわかった.これらの火山地質学的情報の収集と共に,2回目のボーリング掘削の候補地を,カルデラ内でブルサン火山からの扇状地の影響を受け難い地点に決定した.2.日比の研究者を鹿児島大学に集めて,5月22日に研究集会を行った(共催:鹿児島大学国際島嶼教育研究センター).PHIVOLCSには多くの未公表データが蓄積されており,これらの研究結果を公開してもらう一方,日本側の研究技術を紹介することが目的であり,十分な意見交換が行われた.この集会での発表内容は,「地学雑誌」に特集号として掲載される予定であり,現在,各自の投稿および編集作業を行っている.ただし,新燃岳噴火や東日本大震災の影響を受けて遅れている.また,学術誌の論文では掲載できないデータは,鹿児島大学国際島嶼教育研究センターの「南太平洋海域調査研究報告」として刊行を検討している.
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