研究概要 |
この研究では,フィリピン共和国のルソン島南東端に位置するイロシンカルデラの活動史を地熱現象も含めて解明することを目的としており,約41cal ka BPに噴出したイロシン火砕流堆積物とカルデラ形成以降に成長したブルサン火山に焦点を当てて噴火史研究を進めている.本年度は,次のような研究を実施した.まず,研究分担者(小林)や協力者(鳥井真之)および現地の共同研究者であるフィリピン火山地震研究所(PHIVOLCS)のDelosReyes,P.J.氏らと共に現地調査を行った.さらに鉱物分析や屈折率の測定も踏まえて,火砕流噴火ではプリニー式噴火による降下軽石とintra-plinian flowsが初期に発生していたこと,先駆的活動で近くの溶岩ドームとの形成と火山灰の噴出があったことなどが確認された.前年度,イロシン火砕流よりも前の別の噴火による火砕流堆積物がカルデラ内に存在する可能性を指摘していたが,これは再堆積による可能性も出てきた.これらの火山地質学的情報の収集と共に,2回目のボーリング掘削を行い,炭素14年代測定の結果,深度44.2mから11,260BPを得た.残念ながら,今回得たコアには,明瞭なテフラ層は認められなかったが,今後,潜在テフラが発見される可能性はある.現在,昨年度に実施した研究集会(共催:鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)をもとに「地学雑誌」の特集号を編集・準備しているところである.現在,各自の投稿および編集作業を行っているが,いくつかの論文は東日本大震災の影響を受けて遅れている.PHIVOLCSには多くの未公表データが蓄積されており,これらの研究結果を公開してもらえる.福岡大学では,国際火山噴火史情報研究所が2012年4月に設置され,このプロジェクトも含めた共同研究を進める体制が整備されつつある.今後,研究成果は,論文の他,ウェブ上でも公開される予定である.
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