ラオスの世界文化遺産であるルアンパバン市内を対象に,地域の音環境を質的・量的に評価するとともに,世界文化遺産として音環境改善のための計画を立案し,州政府に対して提言を行った。 ラオス国立大学の研究者とともに,ルアンパバン市内中心部の主要な道路沿いにおいて1日の交通量・騒音レベルの変動特性を調査した。あわせて,自動二輪車,乗用車,トゥクトゥク等について,各種車両の走行速度と周波数特性との関係の資料を得た。また,電動トゥクトゥク,電動バイクについても同様な計測を別途行い,資料を得た。これらの調査結果に基づいて,ルアンパバン中心部において電動車両を導入することによる音環境の変化を,シミュレーション計算により推定し,騒音マップを作成した。その結果,シミュレーション計算で得られた予測値と実測値との間に十分な整合性のあることが確認できた。また,トゥクトゥクおよび自動二輪車に電動車両を導入することで,中心部(特に観光スポット周辺)における物理的音環境を大きく改善できることが明らかとなった。 さらに,市内中心部の2地域を対象に,サウンドスケープ調査を行った。複数の地点で昼夜にわたって音の集録を行い,騒音レベルの測定および音源識別を行った。また,各々の測定結果に基づいて,〈音源×騒音レベル〉時間構成マトリックス(TMチャート)の作成を行った。同時に,住民を対象に質問紙調査を実施し,好ましい音,好ましくない音を自由記述により得た。 TMチャートの結果により,当該世界遺産の音環境は,交通音が支配的な音環境と,地域住民の生活音が支配的な音環境に分類され,それらが時間により推移していた。質問紙調査の結果より,住民は,寺院からの音,自然音,動物の声,などを好ましい音として記載し,交通音を好ましくない音として記載した。住民視点においても,ルアンパバン市内における交通騒音対策の必要性が裏付けられた。
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