本研究では、地域紛争のローカル性を詳細に解析する一方で、外的要因との関わりにも注意を払い、1990年代以降顕著になってきているナイジェリアにおける地域紛争のローカル性とグローバル性の関係解明を目指している。 今年度予定通りナイジェリアへの現地調査を行ったが、北部ナイジェリアにおけるイスラーム地域の反政府運動に関する現地調査は、現地の治安状況が悪く実施しなかった。西部ナイジェリアのヨルバ地域における伝統的支配者の政治運動とニジェール・デルタの反政府・反多国籍企業運動に関しては、オバフェミ・アウォロウォ大学、イバダン大学を訪問し、次年度以降の調査計画について相談し、関連資料収集を行った。オバフェミ・アウォロウォ大学ではアデソジ博士とイケレグベ博士に会い、ヨルバ地域における伝統的支配者層の政治活動の再活性化について、1980年代までの活動と1990年代の軍事政権時代の展開、民政移管(1999年)後の運動の変化等について意見交換をおこなった。なお、イケレグベ博士とはイフェで会えたので、当初予定していたオランダへの調査は中止した。 今回のナイジェリアでの現地調査では、ニジェール・デルタ地方における地域紛争の過激性とその重要性について認識を新たにし、来年度以降、その地域紛争の研究を推進できるよう、ニジェール・デルタ地域にあるバイェルサ大学のイポルポ副学長や紛争研究者であるイババ博士、さらにイバダン大学のウド教授と連絡を取り、来年度以降の現地調査とその成果の発表に関する準備をおこなった。 なお、北部ナイジェリアのイスラーム地域の反政府運動に関しては、2009年7月末に死者数百人を出す警察と武装勢力ポコ・ハラムとの大規模な衝突があり、また11月末にはジョス州で数百人が死亡する暴動が発生し、現地での調査が極めて困難になっている。このため、来年度以降の現地調査は、南部地域に限定することを検討中である。その場合、調査項目は、西部ナイジェリアのヨルバ地域における伝統的支配者の政治運動とニジェール・デルタ地域の反政府・反多国籍企業運動に重点を置くことにする。
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