本研究では、地域紛争のローカル性を詳細に解析する一方で、外的要因との関わりにも注意を払い、1990年代以降顕著になってきているナイジェリアにおける地域紛争のローカル性とグローバル性の関係解明を目指してきた。 最終年度にあたる23年度は、研究実施計画で考えていたとおりナイジェリアの地域紛争に関する国際シンポを開催し、本研究会の成果の公開に努めた。当初考えていたナイジェリアでの開催が、現地の政治状況の悪化により困難となったため、場所を急遽京都に変更し開催した。この国際シンポでは、ナイジェリアの地域紛争に関する著名な研究者2名、オックスフォード大学のムスタファ博士とナイジェリアのオバフェミ・アウォロウォ大学のウケジェ博士を招聘し、北部ナイジェリアにおけるイスラーム集団ボコハラムの反政府運動と、近年南部ニジェール・デルタ地域で実施されている地域紛争緩和策としての特赦の効果についてそれぞれ興味深い研究報告を行ってもらい質疑を行った。前者の報告では、2009年7月末に警察と衝突して死者数百人を出したボコハラムの反政府運動が、アルカイダ等の国際テロ組織と結びついた運動というよりも、グローバル化の進展のもとで疎外感を強める北部ナイジェリアの一部のイスラーム集団の人々の運動としての性格が強いことが指摘された。また後者の報告では、武器放棄が条件となっている特赦が実施レベルでさまざまな不正に直面し、地域紛争の火種が残っていることが指摘された。 これらの成果は研究代表者の島田が科研最終報告書にとりまとめている。またこの研究成果の普及に関しては、すでに科学研究費基盤研究(S)「アフリカの潜在力を活用した紛争解決と共生の実現に関する総合的地域研究」(研究代表者:太田至)の西アフリカクラスターや学会の場で報告を行ったほか、今年の8月にドイツのケルンで開催される国際地理学連合(IGU)の国際大会で報告することも決まっている。
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