アフリカ各地で起きている地域紛争は、地域の歴史や文化を反映した特殊性を持っている。しかしそれらは、最近のグローバルな経済社会変動の中で起きているという同時代性も持っている。アフリカ諸国の多くは、1980年代に、債務問題から脱却するために構造調整計画を実施した。ベルリンの壁崩壊は、西側諸国のアフリカ地域に対する関心を低下させたものの、アフリカの政治的民主化を推し進める効果をもっていた。そして2001年9月11日以降の対テロ戦争は、アフリカ諸国に一層の民主化と市場自由化を迫った。 本研究で私は、ニジェール・デルタ地域の歴史と最新の地域紛争の実情に関する研究を行った。その結果、長期に及ぶ政府による無視や圧政がこの地域の人々、とりわけ若者達に絶望的感情を抱かせてきた経緯が明らかになった。また、日常生活を破壊された農漁民は、脆弱性を増大し、そのことが一層多国籍企業や政府に対する反撥を強めてきたことも明らかとなった。そして、人々の不満のはけ口は、地元の伝統的権威や政治家にも向けられるようになってきた。伝統的権威や政治家は、人々の苦しみを和らげるために仲介者としての役割を期待されたがうまく機能しなかった。時あたかも、シエラレオーネ、リベリア、コートジボワールで内戦が終熄し、西アフリカで大量の武器が流通する事態が生じ、これが紛争をより過激なものとした。 以上の結果は、ニジェール・デルタで頻発する「新しい紛争」が、地域的要因とグローバルな要因との相互作用や相乗作用の結果起きてきていることを示している。2009年に開始された(停戦のための)恩赦政策の成否も、このような地域的および国際的要因の両方から判断する必要があると思われる。
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