今年度は当初計画どおり、研究の第1段階、すなわち20世紀前半朝鮮半島北部の地域社会について広く文献資料を収集するとともに、並行して聞き取り調査を進めながら、市郡レベルで研究対象地域を選定することを第一の目的として研究を実施した。その結果、キリスト教会の伝道拠点(missionary station)が置かれていた地域に絞ることが、多面的に地域事情を知ることができるとの結論にいたった。そこで、米国長老派教会が布教していた平安北道の宣川、黄海道の載寧、カナダ長老派教会(1925年以降はカナダ連合教会)が布教していた咸鏡南道の咸興の3地区に絞り込むことにした。そのうえで次のような調査を実施した。 1米国フィラデルフィアにある米国長老派歴史協会で宣川・載寧の資料を収集した。 2カナダ・トロントにあるカナダ連合教会文書館で咸興の資料を収集した。また同地では、咸興出身の高齢者へのインタビューを実施した。 3北海道大学図書館にある地域資料を収集した。また、同志社大学人文科学研究所所蔵の朝鮮北部関連資料をマイクロフィルム化して利用可能にした。 4日韓の書店、古書店等を通じて、郡誌をはじめとした基礎的な地域資料を集めた。 5米国・ハーヴァード燕京図書館にある膨大な関連資料を系統的に複写した。 6研究補助者を雇用し、資料のPDF化など資料の整理作業を進めた。 7日本、米国、韓国の専門家から研究遂行のための情報提供をうけた。 なお2009年8月中旬以降は、在外研究先のハーヴァード燕京研究所を拠点に研究を進めたことを付記しておく。
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