本年度は当初計画どおり、研究の第2段階、すなわち具体的な3地域(咸鏡南道の咸興、平安北道の宣川、黄海道の載寧)に絞って、当該地域の資料を系統的に収集、整理、解読していくことを中心的な作業とした。2010年4~7月は米国に滞在していたので北米資料を中心に収集し、8-9月には韓国で調査を実施、10月以降はその整理と解読を中心に研究計画を実施した。具体的には次のとおりである。 (1) 咸興地域にプロテスタント・ミッションの拠点を置いていたカナダ連合教会文書がカナダのトロントとハリファックス(ノバスコシア州)に分かれて所蔵されている。トロントでは前年度に資料の状態などを調査したので、本年度は郵送により資料を取り寄せた。ハリファックスのノバスコシア文書館では、宣教師の文書資料のみならず、写真資料、録音資料が所蔵されており、広範囲に収集した。 (2) 所属していたハーヴァード大の燕京図書館に関連アーカイブがあり、それを収集した。 (3) 韓国では、国史編纂委員会にて3地域に関わる日本語、ロシア語の資料を収集した。国家記録院では、3地域に関わる植民地期の官庁文書を収集した。以北五道庁では、1945年~朝鮮戦争期に南側に渡ってきた「越南者」の資料を収集した。 (4) その他、古書を中心に、朝鮮半島北部に関する資料を収集した。 (5) アルバイトを雇い、可能な文書をデジタル化する作業を進めた。 (6) 関連する研究者(朝鮮半島北部研究、越南者研究、現代北朝鮮研究)との情報交換に努めた。 (7) 植民地期朝鮮についての基礎的研究を同時に進め、編著および論文の執筆、学会報告を実施した。
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