最終年度は、(1)咸興(ハムフン)地域を中心とした調査データの追加収集ととりまとめ、(2)これまで調査が進捗していなかった解放後(1945年~1950年代)における朝鮮半島北部の社会史的研究に関連した調査を進めた。 (1)咸興地域のデータとりまとめ:入手し得る地図をスキャンしGoogle Earthと重ねながら、地理状況の比定作業を進めた。北韓資料センターでは1945~50年の間に咸興を含む咸鏡南道で発行されていた地方新聞記事を収集した。新聞記事データベースにより、1930年代を中心とする咸興地域に関する記録を系統的に集めた。 (2)解放後の北朝鮮社会についての調査:戦後の北朝鮮関連の新聞・公文書や北朝鮮の民俗学者による地方資料収集から地域事情を読み解くことができるため、東京および関西の国立国会図書館、米国のハーヴァード燕京図書館、韓国・国家記録院、滋賀県立大学(朴慶植文庫)、在日韓人歴史資料館(東京)などにおいて系統的に資料収集をおこなった。 以上の追加調査と過去3年間の収集データとを総合し、20世紀前半の地域社会史の復元作業を進展させた。本研究の中心となった咸興地域については、これまで収集した資料があまりに膨大であるため、年度内に論文投稿にまでは至らなかったが、可能な限り早く学術論文として公開したいと考えている。その代わり、日本の北朝鮮観、朝鮮半島の地域社会出身者の日記研究、植民地研究レビューなど、本研究に関する成果は年度内に公表することができた。
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