研究代表者は、コミュナリズムの拡大深化も含め、印パ分離独立の社会的・経済的背景を明らかにすることを研究の柱の一つにしてきた。本プロジェクトはその一環をなすもので、分離独立の時にインドの西ベンガル州と東パキスタンとに分割されたベンガル州に地域を絞り、新たに公開された原史料を利用して、1930年代から40年代にかけて、農村部でコミュナリズムがどのようにして広がり、農民の支持を獲得したかを解明し、印パ分離独立研究の重要な欠落部-分離独立の農村的起源の問題-を埋めることを目指すものである。コミュナル問題は現代の南アジアでも深刻な政治・社会問題になっている。本プロジェクトは実証的な歴史研究であるが、現代的意義も有すると考えられる。 今年度はインドにおける現地史料調査を、8月14日から9月21日までと12月17日から1月10日までの2回、西ベンガル州公文書館、インド国立公文書館及びネルー記念図書館マニュスクリプト部で行った。本プロジェクトで中核的文書と位置づけるベンガル警察情報部の機密ファイルの整理・公開は順調に進んでおり、調査時点では1950年ころまで利用可能となっていた。ゼロックスコピーも近々できるようになるということであった。新史料の公開ということで、かなり多くの利用者が見られるようになっているが、早めにスタートを切った利点を生かして先端的な研究成果を挙げたいと思っている。本年度は、ムスリム連盟の地方組織と農村部で開かれた政治集会とに関して、興味深い史料を発掘することができた。 本プロジェクトに関連する研究成果としては、ロンドン大学で開催された国際ワークショップに提出したフル・ペーパーがある。これは、コミュナル暴動をどのように分析するか、方法的な問題を扱ったものである。
|