研究代表者は、コミュナリズムの拡大深化も含め、印パ分離独立の社会的・経済的背景を明らかにすることを研究の柱の一つにしてきた。本プロジェクトはその一環をなすもので、分離独立の時にインドの西ベンガル州と東パキスタンとに分割されたベンガル州に地域を絞り、新たに公開された原史料を利用して、1930年代から40年代にかけて、農村部でコミュナリズムがどのようにして広がり、農民の支持を獲得したかを解明し、印パ分離独立研究の重要な欠落部-分離独立の農村的起源の問題-を埋めることを目指すものである。 今年度はインドにおける現地史料調査を、8月7日から9月24日までと1月17日から2月27日までの2回、西ベンガル州公文書館、カルカッタ社会科学研究センター、インド国立公文書館及びネルー記念図書館マニュスクリプト部で行った。本プロジェクトで中核的文書と位置づけるベンガル警察情報部の機密ファイルについては、政党系列及び独立系のヴォランティア組織の活動について、各県が半年ごとに作成した報告書がまとまってファイルされているのが見つかったので、これを中心に史料収集を行った。新聞については、カルカッタ社会科学研究センターがデジタル化した英字紙AmritaBazarPatrikaを閲覧し、関連箇所のデジタルファイルを入手することができた。中央政府の公文書については、最近所管官庁からインド国立公文書館に移管された文書のリストを再精査し、補足的な調査を行った。 本年度は最終年度にあたるので、収集した史料の整理も並行して行った。現時点で言えることは、ベンガル農村部へのコミュナリズムの浸透は、従来考えられてきたような数年をかけた連続的なプロセスなのではなく、1946年を境にして一気に進んだ爆発的な事態ではなかったかということである。この新しい知見に基づいて研究成果報告書を取りまとめる予定である。
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