研究課題
先発隊はヴェトナム・タイグエン省とバクニン省にて昨年同様、莫氏一族の後裔約10件を訪問し、家譜(漢文および現代ヴェトナム語版)、金石史料(主に碑文)、口碑史料(直接インタヴューによる)などを収集した。またハノイにある莫氏連絡会議本部を訪問し、族の活動状況を調査し、本部にある史資料を写真撮影にて収集した。本隊はフンイエン省で莫氏一族の後裔約10件を訪問し、先発隊同様の作業を行った後、2隊に分かれ、1隊はヴィンフク省にて、もう1隊はバクザン省にて同様の調査を行った。フンイエン省は平野部であるため、莫氏子孫の多くはハノイやハイズオン・ハイフォンを中心として行われている「族復興運動」に積極的に参加している。しかし「逆賊」と見なされていた黎朝後期時代(17-19世紀)の情報はやはり乏しい。ヴィンフク省は平野部ではカオバン政権の崩壊によって逃亡してきたという伝承を多く残す一族が多く存在した。家譜史料も収集できたので、莫氏拡散の一例として分析が可能であろう。バクザン省では莫氏がハノイや本拠地ハイズオンを失陥した後、同地に逃亡してきた支派が多いことが判明した。莫朝崩壊直後の族の拡散状況が確認できよう。もう一つの支隊(武内班)は冬期に、中国広西壮族自治区の省都南寧及び同自治区の龍州市・靖西県を訪問し、近世~近代時期にかけての中越関係史跡調査を行った。とくに旧帰順直隷州に靖西県では,莫氏などとも関わりをもったとされる土司の墓や墓碑などを調査することができた。莫氏に関する中国人研究者の論文も増加傾向にあり、注意が必要である。考古隊は、莫氏の祖廟があったハイフォン市ズオンキン遺跡出土資料の研究を行い、比較資料として城郭遺跡や窯址遺跡出土資料の研究・集成を行った。また、莫氏時代の城郭遺跡、ハイフォン市カットバー島などの踏査、資料収集を行った。
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慶應義塾大学言語文化研究所紀要
巻: 43 ページ: 249-261
碑と地方志のアーカイブスを探る(汲古書院)
巻: (印刷中)
新潟大学人文社会・教育科学系附置環東アジア研究センター(編)・『感東アジア地域における社会的結合と災害』新潟大学人文社会・教育科学系附置環東アジア研究センター
『周縁の文化交渉学シリーズ2:陶磁器の文化交渉学』関西大学文化交渉学教育研究拠点無
東アジア書誌学への招待(東方書店)
巻: 2 ページ: 41-60
Tran Ky Phuong, Bruce M.Lockhart (eds.), The Cham of Vietnam : History, Society, and Art, Singapore : NUS Press
ページ: 120-137
研究費成果報告書『中・近世ベトナムにおける権力拠点の空間的構成』(課題番号:20320111、研究代表者:桃木至朗)
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