研究課題
平成24年7~9月に中エジプトのアコリス遺跡で、2カ月半の調査研究を実施した。ラマダン(断食)による1カ月の中断を挟んだフィールド・ワーク1カ月、既存資料の分析研究1カ月半がその内訳である。フィールド・ワークでは、王朝衰微期とされる第3中間期のなかで終末期を調査対象とした。その結果、対外交易がなお隆盛の色を失わなかったことが、東地中海系土器の数多くの出土によって知られ、他方、集落形成が次第に衰微し動物飼育へと移っていく生業の変化も辿ることができた。また望外であったが、集落にビルト・インされた大型墓が確認され、伝統的葬送観を失っていく第3中間期の時代相を鮮明にすることもできた。既存資料の分析研究では、手工業に力点をおいて、紡織、編物、木工、鋳銅に関する遺物を主要な対象とした。その結果、これらの生産が当地で行われ、判明している皮革業とあわせると、生産活動は多彩であったことが知られた。さらに原材料についても分析を進めた結果、紡織、編物は在地産、木工も多くは在地産で一部に東地中海方面からの外材が混じること、外材の使用が一般人の日常品にも及んでいたこと、鋳銅の素材は他に仰いでいたことが立証された。なお、ナイル産の魚が地中海方面に広く輸出されていたらしいという内外の知見を汲んで、漁業関係の遺物の分析にも手を染めた結果、当地もまたその輸出に参画していた可能性がでてきた。アコリスは王朝の中心を外れた地方都市であり、第3中間期は王朝の勢威に陰りが生じた時期であるとされるが、地域社会における人間活動のこのような活発さは瞠目に値する、というのが今次の成果の概括である。これらの成果は、平成25年3月に実施した公開シンポジウムで発表されて議論を呼ぶとともに、分担者が英文論文として一部をすでに公表している。
23年度が最終年度であるため、記入しない。
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明倫短期大学紀要
巻: 16巻 ページ: 10-17
第20回西アジア発掘調査報告会報告集
巻: 20 ページ: 90‐94
古代
巻: 129/130合併号 ページ: 77-99