内蒙古自治区と遼寧省を中心とする中国北方地域は、朝鮮半島及び日本列島の弥生文化の青銅器の起源の地と考えられている重要な地域である。本研究の目的は、紀年銘中原青銅器の年代の再検討によって中国北方地域における青銅器の年代と文化に関する研究の再構築を行うことにある。以上の中国北方青銅器文化の起源・系譜・年代の再構築により、朝鮮青銅器文化や弥生文化をはじめ、東南アジアなど中原の周辺地域であるアジア全体の年代観の再構築をも視野に入れることを目的とする。 平成22年度は国内の資料調査および中国での調査と韓国での補足調査を実施した。 調査は、遼寧省の瀋陽、遼寧省文物考古研究所を基点に、遼寧省博物館、遼東地域(本渓市博物館、撫順市平頂山博物館、阜新博物館)において、研究協力者とともに10月に実施した。本渓市博物館では、馬城子遺跡などの北方地域の年代を考える上で重要な各遺跡の資料を実見し、次に撫順市平頂山博物館では当地域の鋳造鉄器と土器の新出資料を実見することができた。本地域の鋳造鉄器の資料は、戦国燕の東方進出と連動して拡散したものであり、紀年銘中原青銅器の年代をさらに補強することができる点が明らかとなった。なお、鄭家窪子遺跡など重要な資料群の大部分が韓国京畿道博物館に展示のため搬出されており、中国北方地域の青銅器の年代を考える上で重要であることから韓国において補足調査を実施した。国内の資料調査は、東京大学文学部所蔵の牧洋城出土資料について実施した。以上の成果については、中国考古学会などにおいて概要を報告し公表した。
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