本研究の目的は、本研究の目的は、紀年銘中原青銅器の年代の再検討によって中国北方地域における青銅器の年代と文化に関する研究の再構築を行うことにある。この目的を達成するため、本年度の調査は、北京市と内蒙古自治区のフフホト・オルドス地域における資料調査を予定通り冬季に実施した。調査は、北京にて中国社会科学院考古研究所と国家博物館、オルドスにて鄂爾多斯青銅器博物館、フフホトにて内蒙古文物考古研究所、内蒙古文物博物院、内蒙古博物館等で調査を実施した。調査機関については、当初の予定から変更したものもあるが、ほぼ当初の予定を達成することができた。北京市での調査では、春秋戦国期における燕国の青銅器と鋳造鉄器関連遺跡と遺物に関する最新情報について入手することができた。また、内蒙古自治区における調査においては、紀年銘中原系青銅器を出土している小黒石溝遺跡と南山根遺跡の青銅器(多鈕鏡や銅剣、銅矛など)の実物の詳細な観察が可能となった。同時に、オルドス青銅器文化の遺物についても、多数の実物観察の機会を得ることができた。また、年度末には、遼寧省文物考古学研究所から遼寧省における当該研究にとって重要な資料が出土しているという情報を得て、錦州市博物館、朝陽市博物館を訪問し、合わせて、内蒙古自治区のゴウカンキ博物館と赤峰市博物館も訪問した。この調査において、遼寧省と内蒙古自治区における中国北方青銅器研究の再構築に関わる新資料を多数実見することができた。以上の検討によって、今後、中国北方青銅器文化の起源・系譜・年代の再構築に関する研究が進展し、朝鮮青銅器文化や弥生文化をはじめ、東南アジアなど中原の周辺地域であるアジア全体の年代観の再構築研究に大きな影響を与えるであろう6
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