研究課題
本研究は、東アジアと東南アジアそれぞれの境域における、エスニシティや宗教を紐帯としたトランスナショナル・コミュニティの生成・再編過程ならびにその制度的背景を、1960年代から現在までの時間幅で比較考察することを目的としている。本年度は、まず7月に東洋大学アジア文化研究所において、連携研究者を含む国内メンバーが会合を持ち、調査計画・内容の詳細を検討した。その計画に基づき、各メンバーは、夏期休暇、冬期休暇、春期休暇にフィールドワークと文献収集を行った。海外における主な調査は次のとおり。【東アジア】松本:韓国・巨済島等における、内外韓国人の移住と生活史に関する調査。松本と植野(連携研究者):台湾・花蓮市における八重山諸島-台湾間の戦後期の人口移動と、そのネットワークの観光資源化に関する調査。後藤:台湾および香港における祭祀公業の越境的展開に関する調査。【東南アジア】長津:マレーシア・サバ州における跨境ムスリムコミュニティの再編とアイデンティティの動態に関する調査。渡邉(連携研究者)フィリピン・マニラにおけるムスリムの近隣諸国と中東諸国への越境移動に関する資料調査。その他、各メンバーは関係地域の国籍・市民権、住民登録、出入国管理に関する法令等の一次資料を収集した。2009年10月には、松本が代表を務める白山人類学研究会(2009年度第4回)に韓国国学振興院・責任研究委員の金美榮氏を招聘し、韓国における国際結婚とトランスナショナルな家族状況に関する研究会をおこなった。なお、調査成果の一部は、2010年2月、長津と連携研究者の赤嶺、青山が、白山人類学研究会研究フォーラム「東南アジア海域世界の社会史を再考する(Reconsidering Social History of Maritime Folks in Southeast Asia)」(英語)において公表した。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) 図書 (2件)
海洋と生物 186
ページ: 16-24
「現代台湾における祭祀公業の変容―2007年祭祀公業条例を契機として」『アジア社会の発展と文化変容』(東洋大学アジア文化研究所・アジア地域研究センター(編))(東洋大学アジア文化研究所・アジア地域研究センター)
ページ: 259-271
「台湾における植民地支配と判例―政策の実現と司法の役割」『日本の植民地支配の実態と過去の清算―東アジアの平和と共生に向けて』(笹川紀勝・金勝一・内藤光博(編))(風行社)
ページ: 175-187
「序島演部東南アジアの開発過程―周縁世界め経験とアクチュアリティの理解に向けて」, 『開発の社会史―東南アジアにみるジェンダー・マイノリティ・境域の動態』(長津一史・加藤剛(編))(風響社)
ページ: 9-31
「開発と国境―マレーシア境域における海サマ社会の再編とゆらぎ」, 『開発の社会史―東南アジアにみるジェンダー・マイノリティ・境域の動態』(長津一史・加藤剛(編))(風響社)
ページ: 473-517
アジア研究 55巻4号
ページ: 55-75
「境域の言語空間―マレーシアとインドネシアにおけるサマ人の言語使用のダイナミクス」, 『多言語社会インドネシア―変わりゆく国語, 地方語, 外国語の諸相』(森山幹弘・塩原朝子(編))(めこん)
ページ: 183-212
「島嶼部東南アジアの海民―移動と海域生活圏の系譜」,『東南アジア(朝倉世界地理講座3)』(藤巻正己・野間晴雄(編))(朝倉書店)
ページ: 250-259